学問の基本

リベラル・アーツ

ギリシャ・ローマ時代に理念的な源流を持ち、ヨーロッパの大学制度において中世以降、19世紀後半や20世紀まで、人が持つ必要がある技芸(実践的な知識・学問)の基本と見なされた自由七科のことである。具体的には文法学・修辞学・論理学の3学、および算術・幾何(幾何学、図形の学問)・天文学(円運動についての学問、現在の地理学にも近い)・音楽(ここでいう音楽は現代の定義の音楽とは異なる)の4科(Quadrivium)のこと。

1 quadrivium

最近では、そうした伝統的な科目群の位置づけや内容に現代的な学問の成果を加え、やはり大学で誰もが身に付けるべき基礎教養的科目だと見なした一定の科目群に与えられた名称で、より具体的には学士課程における基礎分野 (disciplines) のことを意味する。この現代的な分類では、人文科学、自然科学、社会科学、及びそれぞれの一部とみなされる内容が包括されることになる。

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上:
天文学: 8つの惑星のための、現代の記号

下:
幾何学: ピタゴラス学派のテトラクティス

左:
音楽: アルトの位置におけるハ音記号

右:
黄金比率: φ (ファイ)

由来
古代ローマにおいて、「技術」(ラテン語: ars)は、「機械的技術」(アルテス・メカニケー、artes mechanicae)と、「自由の諸技術」(アルテス・リベラレス、artes liberales)とに区別されていた。

後者を英語に訳したものが「リベラル・アーツ」であるが、その科目や定義の起源は、古代ギリシアにまで遡る。プラトンは、体育、ムーシケー(文芸や詩歌、古代ギリシャにおける音楽)とは別に、哲学的問答を学ぶための準備として、17、18才までの少年時代に、第1科目として数論(1次元)と計算術の研究である算術、第2科目として平面(2次元)に関する研究である幾何学、第4科目として円運動に関する研究である天文学の4科目を特別に訓練する必要があると説いた。プラトン自身によれば、上記4科目の訓練は、手工業者などのための機械的技術の訓練と区別されるだけでなく、少年に対しても決して強制してはならず、自由な意思に基づくもので、何より自身が理想とする哲人国家論における統治者のための教育としての意味を有しており、「数学的諸学科の自由な学習」という意味合いであった。

と ころが、古代ギリシア社会においては、自由人とは、同時に「非奴隷」であり、兵役の義務も意味していたことから(そのため今日的な意味で「自由」の概念を 捉えると、「自由(人)の諸技術」の定義はわかりにくいものになる)、この「数学的諸学科の自由な学習」が「自由の諸技術」としてとらえられるようにな り、その後、ローマ時代の末期の5世紀後半から6世紀にかけて、7つの科目からなる「自由七科」(セプテム・アルテス・リベラレス、septem artes liberales)として正式に定義されるに至ったのである。

自由七科はさらに、おもに言語にかかわる3科目の「三学」(トリウィウム、trivium)とおもに数学に関わる4科目の「四科」(クワードリウィウム、quadrivium)の2つに分けられる。それぞれの内訳は、三学が文法・修辞学・弁証法(論理学)、四科が算術・幾何・天文・音楽である。

哲学は、この自由七科の上位に位置し、自由七科を統治すると考えられた。哲学はさらに神学の予備学として、論理的思考を教えるものとされる。

この自由七科の編成は、キリスト教の理念に基づき教育内容を整えるため、ギリシア・ローマ以来の諸学が集大成されたものと見ることもできる。

13 世紀のヨーロッパで大学が誕生した当時、神学部、医学部などの専門職を養成するための学部では、学部に進む前の学問の科目として自由七科は公式に定められ た。ヨーロッパ中世の大学では、学生はこれらの科目を哲学部ないし学芸学部で学習した。このため現在でもヨーロッパやその大学体系を引き継いだオーストラ リアの大学では、哲学は文学部でなく、独立の学部である哲学部で教えられることがある。

英米の大学ではしばしば、それぞれの学問を象徴として、講堂(オーディトリアム)の高みにぐるりと7つの学科を代表する女神の立像が飾られる。

なお、アメリカのリベラル・アーツ教育についてはリベラル・アーツ・カレッジを参照のこと。

日本におけるリベラル・アーツ
・・・日本においては、戦前の旧制高等学校の「文科と理科」及び戦後の高等学校の「文系と理系」の分類が先行し、「リベラル・アーツ」を掲げつつもいわゆる文系分野が主たる領域となって、3領域すべてをカバーしないなど、取り扱う分野に偏りがある場合もある。特に自然科学については、専攻として設けられていないことが多い・・・

音楽と数学